【合言葉はとりあえずバンコクへ】バックパッカー異国放浪記

らく~ん沢木


バックパックひとつで気軽に旅に出よう

異国の地へ旅立ち、バスや列車に乗り、屋台や食堂の美味しい食事をして、地元民と触れ合ってみたくはないだろうか?

飛行機から宿まで決められたツアーのパンフレットを机の上に並べるのではなく、ガイドブックや時刻表を片手に、パソコンを使って気になる場所や宿をひとつひとつ探してみてはどうだろう。

旅の楽しみの3割は計画の段階にあると言っても過言では無いが、別に綿密に計画を立てる必要もない。もしもどこかに旅したいと思い立ったら吉日。お金とパスポートを身体に仕舞い込み、外国で何かを発見してみようという好奇心を持ってさえすれば、バックパックひとつで気軽に旅立つことは何も難しいことではない。

旅には何を持って行くべきか

ひとり旅の場合は30リットル位、夫婦で旅する時は45リットルの2層式のバックパックを使用している。出発時の重さはLCC(格安航空会社)に搭乗の場合は7kg以内、それ以外では10kg以内の重さ。歩いてもバスに乗っても両手が空くことが理想だ。現金とパスポートだけはバッグに入れるのではなく、必ずお腹に巻くのは旅の常識だ。

 パスポートとEチケット、今はパソコンと携帯電話、海外保険付きのクレジットカードと少しの着替え。訪れる国の地図かガイドブック、場所によっては寝袋とエアコン対策のウインドブレーカー。どこへ行っても重宝するのが洗濯紐とサンダル、日本製の蚊取線香。
日本の100円ショップで売っている4色ボールペンや現地でお世話になった人にお礼としてあげる日本の扇子も必ず持ち歩くアイテムでもある。
 必要な物が出てきたら、現地で買い足していくのが基本だ。

さあどこへ行こうか

映画の世界に憧れてアメリカに行くもよし、美しい中世の街や美術館を巡るのにヨーロッパへ行くもよし。目的がある場合や、海外へ行くならばココと決まっている人は問題無いが、もしもどこに旅をしてかよいのか悩んでいるならば、バックパッカーとしての第一歩を踏む地でとてもお薦めの街がある。

それはタイの首都『バンコク』なのだ。
 
 世界中を旅する人にとってバンコクは特別を超越した聖地だ。今や世界中の航空券をネットひとつで購入できる時代になったが、以前は格安航空券を買いたかったら、「とりあえずバンコクへ」がバックパッカーの合言葉だったのだ。

 バックパッカーの聖地として人気があるのにはもちろん理由がある。

①物価が安い
②何でも物が売っていて買う事ができる
③治安が程々に良い
④食事が安くてかなり美味しい
⑤タイ人が優しく、女性が話すタイ語が美しい
⑥ここから世界中どこにでも行ける
⑦居心地が妙に良い

 これから世界に向かう旅行者、既に旅を終えて戻って来た旅人、世界一周を目指して旅立って来たものの、いまだバンコクから抜出せない者…。日本人を始めとするアジア人、朝からビール片手の西洋人、そして中東人、黒人、年齢も肌の色も宗教も国籍もバラバラの旅人が集まる街である。

ちなみに旅の予算は?

日本からの航空券はLCCで2万円台前半(往復)、メジャーキャリア(近年はベトナム航空が安く狙い目)で3万円台前半から見つかる。
宿泊代は共同ベッドのドミトリーで700~800円位、シングル部屋エアコン無しならば1500円もあれば十分泊まることができる。これでもバンコクは大都会なのでかなり高いが、地方に行けば格段に安くなる。

街中の屋台で焼き飯やラーメンが1杯100~200円。南国のフルーツ切り実は35円。市バスは25円から。国鉄の初乗りは何と30年前と変わらず10円というのは旅人の財布にも優しい。

世界No1!!沈没地バンコク

『沈没』という言葉がいつ使われ出したのかは定かではないが、私が初めてバンコクを訪れた30年前には既に旅人の間で使われていた言葉だった。
「沈没」。すなわち余りの居心地の良さに、その土地にどっぷり浸かって嵌ってしまい、身動きが取れず、旅人が次の目的地に進めない事である。世界中に存在する沈没地ではあるが、バンコクはその代表的な街と言っていい。

今や東南アジアの代表する大都市に成長したバンコクには、日系のコンビニも百貨店もあり、書店では日本語のガイドブックも買える。日本食も現地オリジナルだけでなく、大戸屋・すき家・ココイチ・モスバーガー・丸亀製麺…お馴染みのチェーン店もあり、パックチーと激辛料理に胃や喉が疲れた時は簡単に日本の味に逃げることさえできる街でもある。

バンコク中心部から西へ外れた場所に『カオサン』というバックパッカーのための小さな通りがある。
わずか400~500m程の通りだが、左右に多数の安宿、バー、レストラン、両替所、旅行代理店、土産物屋等々、旅に必要な店は全て揃っていて多くのバックパッカーの往来がある。最初に訪れた人々は誰もが異様な空間に驚くにちがいない。

日本を出発する時に宿を予約しなくても何ら問題ない。余りにも宿が多過ぎて悩んでしまう位の一大バックパッカー地帯なのである。初めてならばとりあえず空港から「カオサン」に向かおう!

本当の旅はここから始まる

ネットが普及した今では昔と違い、バンコクの旅行代理店で格安航空券を歩き探し回って購入する時代は終わった。それでも、ここバンコクを基点に世界中へ旅立つのは全く変わらない。

タイ自体は縦に長細い国であり、北の山岳地帯に行けば少数民族を訪れるトレッキングもできる。南に行けばアンダマン海の美しいビーチが点在する。マレー半島縦断の鉄道の旅も、車窓からの風景の移り変わりが非常に面白い。そのままマレーシアやシンガポールからバリ島やオーストラリアにも飛ぶ事さえできる。

 西に目を向ければ格安でインド行きの航空券も買える。乾季の季節ならば、インドからバスでネパールへ抜け、万年雪で覆われた雄大なヒマラヤを眺めれば心を打たれることだろう。
更に西へ向かうと、パキスタン~イラン~トルコは沢木耕太郎氏の「深夜特急」のコースで、今でも長期旅行者の大人気定番ルートである。そのままヨーロッパや中東、アフリカ大陸のエジプトにも飛行機を使わずに渡れるゴールデンルートなのだ。

そして成長して旅から戻って来る

初めてバンコクを訪れた時は、めまいを起こす程の暑さ、耳を劈く騒音、排気ガスで喉は痛くなり、正直旅人が言うバンコク面白さを全く理解できなかった。しかし、バンコクから旅が始まり改めて戻って来ると自分自身の変化に気付き始める。

「こんなにタイ料理が美味しかったっけ?」
「タイ人って案外親切だなあ…」
「物が溢れているぞ」
 終いには「街が明るい!」「女の子の脚が見える!」と当初とは違う発見をすることだろう。

 他の国を巡り歩き、インドでは何をするにもボラれ続け、食べ物は毎日カレー。アラブでは女性の目しか拝めず酒も呑めず。

列車やバスに長時間揺られて肉体的にも精神的にも追い込まれ、下痢に悩まされる事は何度も。
しかし、バンコクに帰って来る度に様々の経験をし、自分自身が強く逞しくなっている事が実感できた。

生まれ変わったと言うのは大げさではあるが、旅人全員が今までの自分とひと味違うものを得て帰って来るのもバンコクである。

 また各国各地で出逢った旅人と再会するのもまたバンコクだ。
「ヨルダンで会いましたよね!」「スリランカで同じ宿だった○○です!」… 街を歩くだけで旅人と再会するシーンも決して珍しいことではない。

旅の終点でもあるバンコク

そして旅にもいつか終わりが来る。 
世界各地で知り合った旅人が日本に帰国してしまう際、どこの国でも駅やバス停まで見送る儀式・習慣があった。
別に強制される訳でも無いのに、なぜか同じ時間を共有した旅人たちは、まるで永遠の別れのように見送りに向かう。
 
連絡する事は無いと分かっていても、住所と名前をメモ帳に記してもらい、そして「またどこかで会いましょう!」「今度は○○で!」と別れを告げ、旅人は足取りもバックパックも重く、長い夢の旅を終え日本という現実へ引き戻されるように空港へと向かって行く。

 同様に私も後ろ髪を引かれ旅を終える。帰路の機内ではワインを呑みながら、次の旅を心に弾ませて、機内誌の就航世界地図を眺め続けている事は言うまでもない。

最後に新たな旅人へ

旅を始める年齢に制限はないが早い方が良い。
「そのうち行くよ」、「時間ができたら」、「お金が溜まったら」。そんな事では旅に出るチャンスを逃してしまう。
 
私は高校生2年生の時にバックパッカー宣言をしてひとり旅を計画していた。担任教師からは大学生になったらいつでも行けると言われ反対されるも、実際には強行して僅か10日間ながらも台湾・香港・マカオへの旅に出た。これが人生のターニングポイントであったことは間違いない。

高校生には高校生の研ぎ澄まされた感覚が、大学生には大学生の時空があり、いつの時代に旅をするに年齢が早過ぎるという事はない。旅で得た苦労・失敗・経験は間違いなく将来役に立つ時が来るはずだ。

 是非とも、好奇心と夢を持って自分自身の旅を創り始めてもらいたい。ひとりの旅人として出会った時は旅先で共に朝まで語り明かそう!!

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