【テクノシティーベルリン】変わり行くクラブカルチャー

吉木 圭


ベルリンとテクノ

皆さんはベルリンと聞いて一体何を思い浮かべるだろうか?
東西分断の歴史、ベルリンの壁、色とりどりのグラフィティーの数々、またはクラシック音楽や、歴史ある大聖堂。
 決して明るいとは言えないベルリンの歴史は、変化に富んだ個性ある発展を遂げ、多様な人種とカルチャーを巻き込み、他のヨーロッパの街とは一味違う様子を見せてくれる。
日本人にはあまり知られていないが、そんなベルリンで今世界中の注目を集めているのが、テクノという音楽の存在だ。
“四つ打ち”と呼ばれる事もあるこのジャンルは、規則的なビートの上に様々なループを乗せて構成される電子音楽で、一見変化の無いつまらない音楽に聴こえるかもしれないが、一度好きになると病み付きになる独特の魅力を持ったダンスミュージックである。
私もそんなテクノの魅力に取り憑かれてしまった人間の一人で、現在ベルリンに住んでいる。
今回はそんな、ベルリンとテクノについての話を少しさせてもらおうと思う。

ベルリンのテクノカルチャーの幕開け

1989年11月、ベルリンの壁が崩壊してすぐ、当時西側に流れ込んできていたデトロイトテクノなどが、無法地帯と化した廃墟の中で流され始めたのが、ベルリンのテクノカルチャーの始まりである。
 長い間東西に分断されていた若者たちの交流の場として、それまでダンスというカルチャーがそれほど盛んでは無かったこの街に、テクノというダンスミュージックのカルチャーのタネが落とされたのだ。
若者たちは、エクスタシーをキメ、ダンスに夢中になった。
瓦礫が残る廃墟のフロア。その中で人々は、統合の喜びと、自由な開放感を胸に踊り狂った。
今も色濃く残る、インダストリアルなテクノカルチャーの裏側には、こう言った歴史的背景が強く関係しているのだろう。

変わった物と変わらない物、30年後の今

ベルリンの壁の崩壊からもうすぐ30年が経とうとしている。
中心地はすっかり綺麗に整備され、モダンな新しいビルが立ち並び、ショッピング街、レストラン街、大手企業のオフィスなど、目に映るものは先進的で美しい。
しかし一本裏通りに入れば、分断時代の面影を目にする事も珍しくはない、日本と違い、地震のないヨーロッパの国々では、築100年のアパートでさえ、現役の住居として機能することが可能なのだ。
 そんな新旧隣り合わせの街並みは、私たち日本人にとって新鮮な物かもしれない。
クラブカルチャーも大きく変化を遂げた。
音楽のジャンルも幅広くなり、テクノだけでは無く、ハウスなど多様なスタイルのパーティーが昼夜を問わず開かれている。
 現在、主にヨーロッパの若者を中心とした旅行客の増加と共に大きく急成長しているベルリンのテクノシーン。
 以前の様な商業主義ではない、無垢の音楽シーンを見つけるのは今では難しくなってしまったかもしれない。
夏の観光シーズンの週末には一晩で、60を超えるパーティーが毎週開催されており、フロアで話される言語の半数はドイツ語以外の言葉だったりもする。
観光客はもちろん、街にお金を落としてくれる大切な存在ではあるが、ベルリンの音楽カルチャーの中で育ってきたローカルからすると、必ずしも気持ちの良いものではない様にも思える。

しかし、変化には逆らえないのも彼らは知っている様だ。
 現在、様々な人種、カルチャーがドラッグと共に入り乱れるベルリンのクラブシーンは新たな段階に差し掛かって来ている様に見える。
 長い歴史の中で培われて来た、クラブのクォリティは言うまでもなく高く、エントランスから一歩入るとそこには、非現実的な世界が広がっている。
 暗いフロアの中大音量で流れるテクノミュージック、大きな庭が併設されているクラブも多く、踊り疲れた人々は何時間でもベルリンの夏の風にあたりながら、友達と語らったり、ゆっくり過ごす事も出来る。
法律では違法なはずの物も大概はクラブの中で入手でき、その様子はまるで大人のディズニーランドと言えるかもしれない。

ベルリンクラブシーンの魅力、現在

筆者の個人的な感覚ではあるが、現在のベルリンクラブシーンの一番の魅力は、多様性にあると思う。
 様々な人種、年代の人が音楽と愛を求めて集まり、一緒に音楽を楽しむ。もちろん世界最高レベルのテクノに乗せて。
 しかし、世界最高レベルなのは音楽ではなく、むしろ集まっている人たちなのかも知れない。
そこには差別や偏見もなく、お互いの違いを尊重しシェアする意識がある様に思えるからだ。
自分の出身、人種、肌の色、そんな事どうでも良くなってしまえる様な空気がそこにはある。
もちろん、テクノを語るなら世界で一番有名であるだろうこの街には多くの有名アーティストが毎週末訪れるので、日本ではなかなか見る事のできないアーティストのショーも簡単に安く見れるのも魅力だ。

テクノセントラルシティ、ベルリン

音楽はこの街の雰囲気を知る上で分かりやすい、写し鏡の様な存在だが、その他にも建物やミュージアム、ナチス資料館、ベルリンの壁などの歴史的な見所。一見冷たそうにも見えるが、親切で優しいベルリンの人々と緑豊かな街並みなど、観光で訪れて楽しい魅力が沢山ある。
テクノやハウスがもし本当に好きなら、一度は長めの休みをとって、ゆっくりと滞在しながら満喫して見て欲しい街である。
 大型フェスなどでは味わえない、街のカルチャーと一体型したベルリンの音楽シーンを、一度体験して見ても良いかもしれない。

また、若者ならワーキングホリデーを利用した長期滞在というプランも良いかもしれない、ドイツはワーホリ加盟国の中で唯一、現地で観光ビザからワーキングホリデービザに書き換えられる国なので、一度観光で入って90日過ごした後、滞在するかしないかを決める事もできるのだ。
実際に働きながら住む事で見えてくるものも大きく違うだろう。
ベルリンのインターナショナルなカルチャーの中、音楽に触れながら、アーティストやDJを目指しても良いと思う。
 
生活と歴史、音楽と遊び、それらが絶妙に交差する事で成り立っているこのテクノシティー、これからも目まぐるしく変化し続けていくであろうこの街の未来を感じて見てはいかがだろうか?

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