スキー場にいる特別な人々 <ディガーの知られざる世界>

グッドラック


15シーズンのディガー経験

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筆者はスノーボーダーで、15シーズンのディガー経歴があり、現在もどっぷりとその世界にいる。
今回は知られざる「ディガーの世界」を紹介していきたいと思う。スノーボード、スキー愛好者もそうでない方にもこの特殊な世界を存分に味わっていただけるようにしたい。

スキー場でのパークについて

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「ディガー」を語る上でまずパークについて説明しなければならない。

スキー場でのパークとはなにか?

パークとは、ズバリ、ジャンプ台である「キッカー」、人工物の「レール」や「ボックス」などを主としてレイアウトされているスキー場内のコース。とりわけ、ジャンプ台とされている「キッカー」の大きさや種類は様々だ。リップ(飛び出し口)からランディング(着地地点)までが台形のような形の「テーブルトップ」をベースにしたものが、いわゆる「キッカー」。また、リップが「キッカー」と同じだがランディングが横向きの「ヒップ」や「スパイン」もある。これらは主にジャンプの高さに特化するべく、飛び出し口が”しゃくれあがっている”物が多いのが特徴で、地形を活かして造成されている事も少なくない。

次に鋼製や木造の人工物で造られた「レール」や「ボックス」にもそれぞれのパークで形や大きさに個性があり、このような人工物を総称して”ジブと呼ぶ。現在ではこの様な数多くのアイテムがあるがゆえに、各リゾートでそれぞれのスタイル(個性)を競い合い、認め合い、そして高め合っている。また、ライダーのレベルに合わせたパークを数コース常設しているリゾートもあり、スノーボードブランドやスキーブランドがスポンサードしているパークも少なくない。

冬季オリンピックでもパークを利用した「スロープスタイル」という競技は、盛り上がりをみせ、日本人の活躍も目立ち、スノーボードをやらない人にも注目を浴びている。

パークは誰がつくっているのか?

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パークは誰がつくっているのか?

それが表題でもある特殊な人種「ディガー」である!
そもそもディガーとはディグ(掘る)する人という意味を指し、スコップやスノーシェイパーという雪を造成する専用の道具を使い、パークアイテムを造成し、維持管理する職人の事である。

特殊な仕事ディガー なにが特殊なのか?

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私はスノーボーダーで、15シーズンのディガー経歴があり、どっぷりとその世界にいた。

ディガーの何が特殊かというと、まず季節労働という事が挙げられる。
スキー場で働く者は年間雇用の社員を除き、季節労働者となり、オフシーズンの仕事は異なる。よくスキー場のリフト係などに多いのが、オフシーズンである夏場は農家やゴルフ場で働くというパターン。なぜかというと、雪国でこれらの職種は雪が積もれば基本的に仕事がなくなるから。
ということは、地元で家業の農業を営みながら冬場はディガーとして実際に活躍しているスノーボーダーもいる。そんな地元民は、季節に応じて働き方のパターンがあるので、年間を通して季節労働がライフスタイルとなるため、年間のルーティンが決まり、固定給を得られる。
しかし、現在の日本の働き方には適しているとはいえず、大抵の人は結婚などを機に会社員の道へと軌道を転換していく。
それ故にディガーとして活躍している者は、とても貴重な人材とされる。

ディガーの一日

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なぜ私はディガーになったのか。答えはシンプルに「滑りたい」から。

まずディガーの1日の動きをまとめてみよう。

9:00 〜 10:00 整備
10:00 〜 12:00 滑る
12:00 昼食、休憩
13:00 〜 14:00 整備
14:00 〜 16:00 滑る
16:00 〜 17:00 整備


整備時間が合計3時間なのに対し、滑っている時間はなんと4時間!働いている時間より滑っている時間の方が長いのだ。しかしここで、誤解をしないでいただきたいのは、滑る事も遊ぶ事も立派な仕事なのだ。

それはなぜか?

パーク内で一番ディガーが十分に遊べてこそ、そのスキー場は盛り上がり、遊びに来ている利用者も、あのアイテムはこう遊ぶんだ、このジャンプ台でこんなに高く飛べるんだ、などのパークの滑り方の説明書となるからである。つまりディガーとは、自分達で遊びたいアイテムを造って、常設し、利用者から楽しかったと共感される事こそが仕事なのだ。

もちろんパークレイアウトには安全性が必須であり、地形や斜度、積雪にあわせた発想力も重要になる。「造り手」という裏方である一方、ディガーのなかには、スノーボードのプロを目指している者や、実際にプロ活動をしている者もいて、「滑り手」という花形にもなりうる。近年では、重機のオペレーター自体がディガーというチームも珍しくなく、大きなアイテムを作るには「滑り手」でもあるオペレーターは欠かせない。さらに、高価な重機を提供してくれるスキー場側の理解も重要である。そのほかにも、パークレッスンやイベントなどを行ないスノーボードの発展に貢献している。

ディガーとは、大好きな事をやりながら給料をもらい、さらにスノーボードの発展にまで貢献できるという、とてもクリエイティブかつ、魅力的な職業だと私は思う。

ディガーについてまとめ

ディガーを少しお分かりいただけただろうか。彼らはスノーボードを愛し、単純に職業としてだけではなく、ディガーそのものをライフワークとしている。ディガーとしての経験で、チームの大切さを知り、クリエイティブな発想を持てるようになり、スノーボードをさらに愛す。
パーク利用者の人生にもほんの少しの刺激を与えられれば本望だ。一見、少しワルそうで、チャラそうに見えるかもしれないが、彼らは仕事に対して誇りを持っている。安全性を第一に配慮し、人々を楽しませたいと思っている、いわばエンターテイナーなのだ。

冬という短い季節にだけスキー場に生息する特殊な人種のディガーを、少しだけでも意識してパークを楽しんでいただければ嬉しい。

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