神の庭からの招待状 <笹倉湿原 別名 神の庭>

まーこ


神の庭からの招待状

1枚の展示写真を見た時に、私たち家族は「神の庭」から招かれた気がした。
愛媛県の石鎚山系の標高1390m地点にある笹倉湿原、別名「神の庭」。
神秘的な写真の風景を自分の目で確かめてみたいと思い、私たちは「神の庭」へ向かうことを決意した。

「神の庭」笹倉湿原に初チャレンジ

撮影maaco
私はいつも家族全員で登山をする。私、夫、娘2人の4人。笹倉湿原に初チャレンジしたのは長女が7歳、次女が4歳の時である。片道1.6kmを大人の足で2時間ほどかけて登る山道を4歳の子供を連れて行けるのか不安ではあった。普段からキャンプを通じてトレッキングをしており、4時間ほどのコースは自分で歩けるガッツがある次女。それに対して長女はいつも途中で出る一言がある。「やっぱり、こんとったらよかった・・・」。だが、親は気にしない。周りの景色や新たな発見に機嫌を直すことを知っているからだ。
 今回のチャレンジは5月、少し出遅れ12時の出発となった。登山口は、「本当に入っていいですか?」と聞きたくなるような様子で私たちの前に立ちはだかった。しかし、中に入ってみると、初夏をむかえる準備をした森の様子に、子供たちも大喜び。山アジサイや見たこともないような大木。倒れた木の間から次の新しい芽がかわいらしくこちらを見上げている。
20分ほど進むと、道が急に険しくなる。崩れた石畳みを下り、ぬかるんだ急な斜面を登り、気づけば2時間が過ぎた。上から降りてくる人に挨拶をかわすと、行き先の距離と時間を聞く。子供を連れての登頂は、諦めることとなった。

リベンジ

同年7月、私たち家族は、もう一度笹倉湿原を目指した。今回は10時に登山口を出発。5月とはまた違った森の様子に、子供たちも興奮気味。前回2時間かかった場所まで、この日は1時間。子供たちも一度来た道をスムーズに歩く。しかし、本当に大変だったのはここからだ。笹が私の身長ほどに伸び、藪漕ぎをしなくては、前に進めない。足元が十分見えず、恐ろしいのはマムシの存在だ。我が家は私が先頭、次いで小さな次女、長女、夫の順に並んで歩く。マムシなどの被害に備え靴など足回りは十分に装備をし、マダニなどの虫や笹から皮膚を守る対策も長袖を着るなどして備えは十分にした。
 藪漕ぎを終えたら、今度は足をひねりそうな石がゴロゴロとした細道、急な坂道、水でぬかるんだ道、無言でズンズンと進む。足に痛みを感じ、見てみると黒い小指の先っちょくらいのアブがたくさん足にとまっている!それだけでなく大きなスズメバチに追いかけられたり、行く道中で幾度となく獣のにおいが鼻につき、近くに気配を感じおびえる私と子供たち。その姿を今思えば笑えてくるが、あの時は恐ろしい思いをした。

「神の庭」と出会う

撮影maaco
約3時間の長い道のりを乗り越えて、私たちは遂に「神の庭」にたどり着いた。
深い山の中にぽっかりとあいた湿原。湿原にはウマスギゴケという植物が群生し、なんとも言えない神秘的な静寂の空間を造りだしている。私の中にある日常のいろんなことが、清められてくような感覚だった。この日の到着時には霧状の雨が降って、ウマスギゴケについた水滴がキラキラと輝き、その美しさにしばらくみとれた。展示された写真の中では気づかなかった「神の庭」の新たな神秘の発見に感動した。
 「すごーい!」これまでの道のりで疲れ果てていた子供たちもの歓声が起きる。ブランコや人形遊び、おままごと、動物園などが好きな年ごろの子供たちが、自然が織りなす景色に感動している姿にどこかほっとする。移りゆく季節ごとの景色をまたここで家族で見たいと思った。生きていることに感謝させられる。家族に、自分に今日も「ありがとう」。

アブよ!また来るよ

しかし、長くはとどまれなかった。なぜなら、私の周りにはいつも奴らがいる。アブだ!子供たちには寄り付かないのに、私にだけ寄ってくる。しかも尋常ではない量のアブが。ご存知の方も多いと思うが、アブは熱と二酸化炭素に反応して寄ってくる。また黒色にも反応するようだ。血を吸うのはメスのみ。卵を産むためだそうだ。私は家族の中でだれよりもアブの大好きな3点をそろえていたようだ。こうなっては、もう休憩なんてしていれない。小走りで下山を始める。途中次女が疲れて眠くてぐずりだしたため、夫は次女を担ぎ、先頭を行く私と長女の小走りに必死についてきた。アブの大群を率いる私を、夫と長女が笑う。下山時間2時間。素晴らしいお見送りのおかげで、とてもスムーズな下山ができた。車に乗り込むころには、30か所以上アブに足をかまれた。服の上から噛むとはすごい執念。どうぞ元気な卵を産んでください。

家族に囲まれ生きる自分を確認

これまで石鎚山や瓶が森、皿が峰、その他、愛媛の山を子供たちと登った。子供たちは行く道中で「もう二度と登らん!」と断言するが、登山を終え、温泉につかりながら、「お母さん、また行こ!また、あの景色を見たい!」という。子供ながらに、辛いことを乗り越えた時にしか見えない景色があることを知っているのかも知れない。

子供には遊びを通して言葉では伝わらないことを伝えたい。
いつでも感動できる自分でいたい。

家族に囲まれ生きている自分の幸せを確認できた。

さあ、次はどの山に登ろうか。
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