オーストラリアロードトリップ<ドライブキャンプ紀行>

川鰭 優


はじめに

オーストラリアを訪れたことがあるだろうか。
観光大国であるこの地には、様々な旅人が、それぞれのスタイルで旅をしている。
夜な夜な遅くまで飲み明かし、赤い目をこすりながら早朝のバスに乗り込むバックパッカー。有能な添乗員と共に効率よく淡々と工程をこなしてゆくパッケージツアー客。素晴らしい眺望を誇るリゾートホテルでのんびり過ごすハネムーナー。会議に向かう出張者。
それぞれが、それぞれの時間と予算、そして求めるものと折り合いをつけながら各自のスタイルを築いていく。

自然 自由 キャンプ

この記事では、そんなキーワードにピンとくるあなたに、車にキャンプセットを詰め込んで、自由気ままに広大なオーストラリア大地を進む、ドライブ&キャンプ旅を推奨したい。

ドライブ&キャンプ①  オーストラリアならではを体感出来る

Billy Tinと呼ばれるアルミのクッカー。$3くらい。
オーストラリアの地は広大だ。
日本の20倍以上の土地を持ちながら、人口は日本の5分の1。そしてその人口の90%以上は全国土の2%程の海岸線沿いに点在する都市に集中している。都市部には他国の都市部と同程度の人口密度であるのに対し、人が不在、あるいはまばらにしかいない地域が国土のほとんどをしめているのだ。
必然的に観光時の都市間移動は飛行機や長時間の夜行バスだよりになり、観光は各都市拠点、観光バス頼りになる。
しかし飛行機で飛ばされてしまうこの都市間には隠れた名所が山のようにある。当たり前のようにそこにある大自然にこそオーストラリアの神髄があるのだ。
また、オーストラリアの根底には国民的唱歌「Waltzing Matilda」に見られるように、昔からswag(全天候型の寝袋的なもの。テントを張らずに直接地面に敷いて寝る)とタッカーバッグ(食べ物を詰め込んだリュック)のみで行うシンプルな放浪旅への哲学と憧れがある。気候の温暖さなども相まって、オーストラリアには旅人が多いのだ。
さらに遡れば、オーストラリアに300程存在した先住民族文化の中には、今でいうパスポートのようなメッセージスティックと呼ばれる自分の出自を示す棒を持ち、昔から伝わる歌を地図にして、歩いて旅をすることを一人前の男になるための通過儀礼とする文化がいくつも存在した。
現代の旅人達はそうした精神を受け継ぎ、車でどこまででも旅をする。アデレードからダーウィンをつなぐ「アウトバック」を始め、多くの人気コースも設定されている。時には荒れ果てた道のりを、自慢の4WDを巧みに操り、朝晩問わずどこまでも旅をするのだ。
「車とswagがあればどこにでも行ける」
彼らは口癖のように話す。
この放浪大国オーストラリアで、わずか2%の国土でくすぶっている理由はひとつもないのだ。

ドライブ&キャンプ② 運転しやすさ

どこまでもまっすぐ続く道。
オーストラリアは日本と同じく左側通行右ハンドル。レンタカーをすればほとんどの車がトヨタかヒュンダイのAT車だ。しかも最新機能付き。つまり運転環境は日本とさほど変わらないのだ。
さらにオーストラリアの道は広大でまっすぐかつ走る車の数が極端に少ない。クルーズコントロール機能があれば更に快適。永遠のように走っていられる。駐車場も広く、たいていの場所で前向き駐車、前向き発信が可能だ。
もちろん都市部に行けばそれなりに混雑がある。特にシドニー、メルボルン周辺は地獄のような渋滞やマナーの悪いドライバーを見かけることが多々あるのも事実だ。しかしそれもほんの一部であり、時間とルートを工夫すればまず問題はない。
他に気を付けなければいけないのは、雨期の乾燥地帯とカンガルーの激突だ。乾燥地帯は雨期でなくても4WD以外は通行できないルートも多くある。間違ってもそのエリアには踏みこまないように。カンガルーの被害は多く、オーストラリアの車の多くにはルーバーと呼ばれる柵が車の前方についている。あの巨体にぶつかられたら車はひとたまりもないうえにレンタカーの保険も効かない。カンガルーが活動的になり、視界も悪くなる夜間の運転は控えてほしい。
これらの注意点さえ守れば、オーストラリアは日本よりはるかに運転しやすい環境だ。
オーストラリアに行くまでペーパードライバーだった私は、日本での運転に未だに苦労している。

ドライブ&キャンプ③ 安い

雨の日や疲れた日は道端や無料キャンプ場に車を止めて車の中で休むことも。海から登る朝日とともに目覚めます。
オーストラリアのレンタカーは意外に安い。週ごと、月ごと割引など、長期間借りることでどんどん安くなるシステムを設けているところが多いため、うまく探せば保険込みで月$400(日本円で4万以下)程でレンタカーをすることが可能だ。
ガス代は日本と同じくらいだが、場所によってかなり異なる。僻地や観光地では目が飛び出る程高くなり、都市に行けば激安ガソリンが手に入る。走行距離やその時のガソリンの価格によって経費が大きく変わってくるため、常に料金表示に目を光らせておく必要がある。
次に宿泊費だ。オーストラリアには膨大な数の無料キャンプ場がある。私は無料キャンプ場ガイドを古本屋で買い、大いに使わせていただいた。また、道路脇には各所に自然に囲まれた仮眠スペースが設けられている。少し道を外れてconservation areaや、privateと書いていない空き地で一晩明かすことも多々あった。先に述べたように、オーストラリアにはキャンプ&ドライブの旅行者が多く存在し、おそらく英語圏のどの国よりも野営がしやすい環境と理解がある。$15-30程出せば設備の整ったキャンプ場も散在し、時折こういった場所でシャワーと洗濯を済ませた。宿泊費については、都市滞在に比べ、ほぼないに等しかった。
そして食費。キャンプをするとキャンプ飯という楽しみがついてくる。オーストラリアには昔からswagと共に放浪の相棒として知られるBilly Tinというアルミの粗末なクッカーがある。私はこのBilly Tinと小さなガスストーブであらゆるものを調理していた。水のタンク、ジャガイモ、玉ねぎ、ハーブと塩コショウは最低限ストック。乾燥地帯ではカンガルーの肉がスーパーにあり、海の近くでは鮮魚を売る店もある。現地の食材で自炊をすれば、安く地元の味を体感することができる。
さらにこの旅では情報が何よりも重要になる。基本は各地の観光案内所でかなり詳細な地図込みの有益すぎるガイドブックが無料で調達できるが、現地で有効なスマホもしくはポケットWi—Fiを準備しておくことを強く進める。スマホはGPSの代わりにもなる。

これら全てを合わせて、時々にイルカと泳ぐツアー、ちょっといいホテルや食事等贅沢をして、私の場合は三ヵ月50万円弱掛かった。
以前バックパッカーとしてオーストラリアを旅行した際は一ヵ月ちょっと遊びすぎるほど遊びまわって20万円ほどだったことを考えると、バックパッキングと同額か少し多めで、更に自由な旅を味わうことが出来るということになる。

ドライブ&キャンプ④ 楽しい

道中であった動物たち。ツアーだったらこんなゆっくり写真も撮れません。
結局これだろう。純粋にこのスタイルは楽しいのだ。
例えばドライブそのものをとっても、道中の景色は素晴らしいものがある。そしてその景色が気に入ったら少し止まって写真を撮ったり、その場でキャンプすることだって可能なのだ。また、道中出くわした野生動物を止まってじっくり観察してみたり、たまたま見つけたハイキングコースに挑戦するのも良いだろう。
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そして何より、その日その日をキャンプで暮らす毎日は本当に楽しい。より良いキャンプ場に行くためだけに遠回りをしてみたり、キャンプ場で出会う人とのんびり話をしたり、ただただ火を燃やして夜を過ごしたり、おいしいご飯を作ってみたり… 
こういったキャンプ場や野営適地で出会うのは、大抵リタイア後にキャンピングカーで旅行をする老夫婦か、先に紹介した放浪者魂を持った旅人だ。安宿に泊まっていたときに出会うのは同じく各国からの若者旅行者が多かったことに比べると、現地の年上の年配者に会う機会が多く、その分情報量が多く、自分の旅につながる。より地元密着型の旅になるだろう。
ヒッチハイカーを拾ってみたり、トラベルメイトを募るのもいい。誰かが加わることで旅は全く別ものになり、それがまた楽しいのだ。
ノープランで出かけても、自分の選択と人との出会いの連続の中で、旅がどんどん作り上げられていくこの感覚が、このスタイルの醍醐味だ。

最後に

オーストラリアでのワーキングホリデーの締めくくりに、友人と車に乗り込んでオーストラリアを一周する「ラウンド」を試みる人は多い。私はこれがもっと短期旅行者にも広がってほしいと思っている。
例えば一週間でもいい。例えば南オーストラリアであれば一週間で砂漠地帯から美しいビーチまでしっかり堪能することが出来る。タスマニアも小さな島ながらそこら中に見どころが散在し、ドライブ&キャンプの最適地である。
国際免許の取得は驚くほど容易である上に、レンタカーの手続きはホテルと同じようなものだ。
次にオーストラリアを訪れる際には是非、思い切ってこのオーストラリアらしい放浪旅を、オーストラリアらしい大自然を、全身で味わってほしい。
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